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基礎から学ぶ発育発達のための身体活動 -元気な子どもを育む確かな根拠-
著:田中千晶
B5判・192頁・図表143点
ISBN:978-4-7644-1205-7
2019年10月10日
★座るを減らして身体を動かす!
★運動だけでは身体活動量が増えるとは限らない
★元気を左右する24時間の過ごし方
運動が身体に良い影響を与え,病気の予防や健康につながることは,子どもから大人まで認められ,周知のことと言えます.
しかし,身体活動全般に目を向けると,世界では,身体不活動が死亡者数に対する4番目の危険因子となり,一方,座り過ぎていることのの弊害は喫煙に匹敵することも指摘されています.そして,このような大人の行動には,子どもの頃の習慣が持ち越します.WHOは,2019年4月,「5歳未満の乳幼児を対象とした,24時間の行動ガイドライン(身体活動,座位行動,睡眠)」を策定しました.
本書では,子どもから高齢者の「今」だけでなく「未来の元気」に繋がる,望ましい発育発達と運動・スポーツだけでは捉えきれない身体活動の重要性を,一個人の経験や主観ではなく,国内外の研究結果に基づいた最新のエビデンスを用いて執筆しました.
まず,「身体活動量」とは何かを説明した後,運動・スポーツ習慣の不足だけでは捉えきれない「身体不活動と座位行動の違い」を解説しました.そして,子どもから高齢者までの発育発達の捉え方と現状,そして,自らの元アーティスティックスイミング(旧名称:シンクロナイズドスイミング)日本代表選手や母親としての実体験から,女性に関わる諸問題についても,エビデンスに基づいた知見を取り上げました.そして,読者の皆さんが,就学前施設や学校,家庭などの現場でも利用できる「身体活動量」や「座位行動」の評価法,就学前施設や学校での健康診断および体力測定の結果の解釈についても解説しました.最後に,2014年から参画中の子どもの身体活動促進をはじめとした生活習慣改善に向けた国際比較研究の紹介と,就学前施設や学校,家庭で実施できる「身体活動量促進」や「座位行動抑制」の方法に関する知見を紹介しました.これらは,筆者が,保健体育科教員,幼稚園教諭,保育士などを目指す大学での「発育発達学」の講義や大学院の修士課程の授業で講義している内容です.また,コラムには,学生達から「役に立つ」「面白い」といった感想が寄せられた話題を紹介しました.
本書を通じて,活動的で元気な子どもの発育発達において,また読者の皆さんの生涯にわたる元気のために,運動・スポーツだけでは捉えきれない身体活動がいかに大切かをご理解いただくよう努めました.また,教科書として使う学生の方々だけでなく,実際に子どもにかかわる多くの職域の方々の日常活動,実践活動に役立つヒントや論拠となれば喜ばしい限りです.
送料:495円〜
第1章 身体活動量を学ぶ
1.身体活動量とは〜運動とニート〜
2.なぜ今,身体活動量が重要なのか
1)世界の身体活動量の現状
2)子どもの頃の活動的なライフスタイルは,成人期に引き継がれる
3.身体活動量を評価する方法
1)総エネルギー消費量の構成要素
2)エネルギー消費量の評価法
3)総エネルギー消費量の評価法
4)基礎代謝量,身体活動レベルの加齢変化
4.大人と子どものエネルギー代謝の違い
1)家電などの機械化と私たちの日常の身体活動量
2)子どもは小さな大人ではない
3)子どもの様々な活動時のメッツ値
第2章 身体不活動と座位行動の違い
1.身体不活動とは
1)身体不活動の評価法
2)歩数による中高強度活動の推定
3)昔と今の子どもの歩数
2.座位行動とは
3.座位行動を評価する
1)質問紙法による座位行動の評価
2)加速度計法による座位時間,座位の中断の評価
3)姿勢計法による座位の時間の評価
4.座位行動の現状
1)質問紙による主観的な調査結果
2)加速度計による客観的な調査結果
第3章 発育発達を評価する
1.発育を評価する
1)身長・体重の成長曲線
2)早熟と晩熟の評価法
2.肥満とやせを評価する
1)肥満の判定法
2)体重のなかみ
3)体脂肪の測定法
4)発育期における除脂肪の構成
5)発育期における体脂肪率の変化
6)発育期におけるエネルギー蓄積量
7)加齢に伴う骨格筋量の推移
3.諸外国での肥満とやせを評価する方法
4.体力を定義・分類する
5.文部科学省・スポーツ庁による子どもの体力・運動能力を測定する方法
1)4〜6歳までの幼児を対象とした運動能力調査
2)6歳以上の体力・運動能力の測定法
第4章 体格と体型の変遷を学ぶ
1.統計資料からわかる体格と体型
2.肥満の弊害を学ぶ
3.やせの問題を学ぶ
4.肥満とやせの出現率を学ぶ
5.若年成人女性のやせと低出生体重児
6.女性アスリートの三主徴(Female Athlete Triad:FAT)とは
1)利用可能エネルギー不足
2)機能性視床下部性無月経
3)骨粗鬆症
第5章 体力,生活習慣,健康状態の変遷を学ぶ
1.統計資料からわかる体力,生活習慣,健康の状態
1)子どもの一週間の総運動時間
2)体力との関係
3)子どもの生活習慣
4)子どもの健康状態
5)近視の増加とその原因
2.なぜ,子どもの体力を高める必要があるのか?
1)成人における体力の意義
2)子どもにおける体力の意義
3.基本的動作の発達
1)幼少期の基本的動作の発達が及ぼす影響
4.経年変化からわかる体力・運動能力
1)体力・運動能力の現状
2)体力・運動能力の経年変化
3)部活動の変化や新しい取り組み
5.体力トレーニングは,いつ頃から始めると良いのか
6.体力と運動・スポーツの効果
1)筋骨格系に対する運動・スポーツの効果
2)呼吸循環機能に対する運動の効果
3)成人と高齢者の全身持久力の基準と成人の運動量の基準
4)幼児の運動指導と運動能力
5)認知機能に対する運動の効果
第6章 身体活動量と座位行動の関連指標・変動要因とガイドラインを学ぶ
1.健康関連指標との関係
1)身体活動量との関係
2)座位行動との関係
2.身体活動量と座位行動の変動要因
1)歩数による変動要因の検討
2)加速度計による個人内要因の検討
3.日本の身体活動量のガイドライン
4.諸外国の身体活動量・座位行動ガイドライン
1)身体活動量のガイドライン
2)座位行動のガイドライン
3)24時間の行動ガイドライン
第7章 身体活動量,座位行動の国際研究を比較する
1.肥満とやせの子どもの国際比較
2.身体活動量・運動習慣・座位行動・体力の国際比較
1)国際比較を踏まえた日本の課題
2)国際的な傾向
3)結果のよかった国の例
4)人間開発指数との関係
5)加速度計法を用いた身体活動の国際比較
3.身体活動量の変動要因の国際比較研究は「万能か?」
4.47都道府県別の運動習慣・座位行動・体力を国際指標で比較する
1)組織化されたスポーツへの参加
2)活動的な移動手段
3)座位行動
4)体 力
5)家族および仲間の影響
6)食習慣
7)睡眠習慣
8)運動器の健康
第8章 身体活動量を促進し,座位行動を抑制する
1.身体活動量を促進する方法
1)学校を主体とした介入と身体活動量などへの効果
2)学校を主体とした介入と健康関連指標への効果
3)小学校での体育授業を主とした介入と身体活動量や体力への効果
4)幼児および小学生を対象とした介入と基本的動作スキルや身体活動量への効果
5)就学前施設における保育内容と身体活動量への効果
6)家庭での身体活動促進の介入に関する効果
7)学校での介入と認知機能や学業成績への効果
2.座位行動を抑制する方法
1)学校での座位時間の抑制の介入
2)就学前施設・学校,家庭および地域などの座位行動抑制の介入
3)幼児を対象とした就学前施設や家庭など様々な場における座位行動抑制の介入
